帝王の娘スベクヒャン

韓国時代劇『帝王の娘スベクヒャン』を見ました。三国時代百済を舞台にした物語なのですが、正直今まで見てきた宮廷物のなかでは一番好きです。時代劇としては百済の歴史を知らない私からしてもおいおいそれはねーだろと思う場面も多々あるという雑さなのですが、人間ドラマとして楽しませていただきました。
各話のあらすじは探せばいっぱいあるので省き、自分用の備忘録として最終話まで見た段階での各キャラへの感想を殴り書きしています。
 
 
 
 
 
ソルヒ
・推しです、どう考えても善良な主人公を好きになる視聴者がほとんどの中で私はソルヒがいとおしくて仕方ありませんでした。
・家柄コンプレックスが激しく性根の腐ったキャラであることは間違いないんだけど、私自身も先祖代々百姓の家なのがコンプレックスで、武家出身の人間が羨ましくてたまらない子どもだったから気持ちが分かってしまう。これは実質的な生活がどうこうではなくて、自分のルーツに誇りが持てるかどうかの問題なんですよね。実際ソルヒは腹の足しにもならない花を愛でながら、食に対しての興味は薄く姉に譲っちゃうタイプで。王女になって良い暮らしがしたいというよりは、王女という肩書きが欲しい、皆から崇められたいという欲求が強い。
・限りなく悪役なんだけど人殺しが何よ父殺しがなによと割りきれるほど良心を捨てきれない中途半端さが好き。皇后や側室がバチバチしてる大奥系ドラマなら序盤で追い落とされるようなキャラだと思うんですが、ここまで絶対的な悪役になれるのはこのドラマの治安の良さ故だと思う
・推しですが、嘘の付き方がその場しのぎすぎてイライラしてくることはありました。「賢いと思ってその実自分のことを追い込んでいる」のは哀れで腹立たしく、ソルヒを見る感情がチンム公とシンクロしていく

 
チンム公
・推しその2
・ただただ本当に可哀想だと思います。視聴者目線だと武寧王の苦悩も分かるが、それにしてもそこまでする必要があったのか?と思わざるをえず。太子ももちろん可哀想なんだけど、太子は父と慕った王様から実子への愛と形は違えど大切にされてたのは間違いない。でもチンム公は、父と慕いこれまで心の支えにしてきた東城王は自分のことなど何も思っていなかったことを知ってしまうわけですよ。代わりに実父である王様が自分を愛してたことは知れても、王様は実子への愛よりも従弟との約束や義務感を選んでるわけです。その上自分の母は忘れられた存在という太子の苦悩はそのままチンム公にスライドするおまけ付き

 
 
 
 

ソルラン
・ほんとに良い子だと思う。ソルランは良いところも悪いところも王様によく似てる。ソルランをも王様も独善的な善良さを持ってる
・あそこまでされてソルヒを許しチンム公を許したのは純粋に凄い。肉親への強すぎる愛も王様似かな。
・サドやチンムに秘密を共有して愛を深めるソルヒと、愛ゆえに一人で抱え込むソルランという対比が姉妹の性格の違いが出てて良かった
 

 
 
ミョンノン
・正直男としての魅力はチンム公の方が上だと感じました。でも王としての器はやはりミョンノンに賞杯があがります
・王様は太子のことをそれはそれは大事にしていたし、実子であるチンム公より太子を優先してきた。それは間違いない。そこにはもちろん愛情もあったが、どちらかというと義務感や責任感の方が強く、親としての愛情はチンム公への方が強く注がれていた。それを知ってしまった絶望感はんぱないはずなのに、一晩で立ち直りチンム公を擁立出来る太子は立派

 
王妃様
・推しその3
性善説の固まりか???
・良い子ちゃん主人公のソルランをもってして何故そんなに寛大でいられるのかと言わしめるお人。たぶんおそらく絶対母親似
・ソルヒが推しで王妃様も好きなので二人の対立ターンだけは辛くてあんまり見直せないんだけど、激おこな時の怒りかたが「日に三度の食事以外の飲食禁止」「日が暮れたから下がらせろ」っていう生ぬるさ、聖母か?
・王妃様の気持ちに気付かずチェファチェファ言ってる王様は全力で反省してほしい、来世では唯一の女人になりたいと言ってるが王妃様は武寧王には勿体無いのでもっといい男を捕まえてくれ
 
 
王様
・大半のことはこの人のとりかえばやのせいだと……
・自己犠牲精神が強く、自身より国の幸せを選んだ哀れな人。でも自分の幸せ捨てるのは自由だけど自分の子どもの幸せも一緒に捨てるのは親のエゴだと思う。そのわりに覚悟しきれてない
・王座を幸せだと思ってない上で、実子ではなく太子に継がせたのは穿った見方するとちょっとずるい気もする
・こっちは視聴者目線で見てるので苦悩が伝わってくるけど、わざとやってんのか?っていう言葉選びの悪さ。王宮から追い出したり硯投げつけたりチンム公への扱いがクソ酷すぎな状況で「チンム公を助けてくれて感謝してる」って言われたらそりゃヨン達率も嫌みか煽りと受けとる、チンム公のチェファ殺しが明らかになったときの「余が悪かった」発言もはたから聞けば自分が東城王を殺しました発言にしか聞こえない
・全体的に善良なのは間違いないんだが、いかんせん善良さが独善的で余計なことをしてる感じが否めない。そこらへんがマイルドになってソルランに受け継がれた感じ
・ソルランへの態度が娘へのそれなのに対して、ソルヒのことは娘というよりチェファの身代わりに感じた。肉体的接触は弱くても心を通じ合わせてるソルランにたいして、ソルヒには心の距離を感じつつ肉体的距離が近くて王女というよりは精神的側室だったんじゃないかと邪推してしまう。ソルランとソルヒのキャラの違いもあるんだろうけど、血の繋がった父娘ならああ妖しい雰囲気にはならなかったんじゃないだろうか


へ佐平
・一番泥を飲んだ人、ここまで割りきってくれると清々しいし嫌いじゃない。でも必要以上に周り(ソルヒやヨン達率)を煽っていくスタイルはやめたほうがいいと思う。まあ何故か王様から目にかけられてるヨン達率がむかついたのかもしれない
・奥さん思いなところは評価してる、良い夫です。でも本人が受け入れてるとはいえ娘を親子ほど年の離れた王様に嫁がせたのは良い父親とは言い難い。そこらへん含めて百済のために全てを捧げた人
 
 
ヨン達率
・国に尽くしたへ佐平、人に尽くしたヨン達率。どちらも好きです。
・チンム公が武寧王の子だと分かっても大事に思い続けてくれて安心した。(誤解が解けてみれば、東城王の子息を守ろうとしてくれた武寧王の子だから恨む理由も無くなるわけだが)
・悪事働きまくりなのは良くないんですけど、武寧王が無自覚に煽りまくりで気持ちは分かる……
 
 
 
ホン内官
・主の気持ちに寄り添うという点ではへ佐平より忠臣かも(へ佐平は王様の忠臣というより百済の忠臣)、王様が泣けない時に代わりに泣いてあげられるのは多分ホン内官だけ。強制的に重すぎる秘密を共有されられて可哀想なので王様はホン内官をもっと大事にしてあげてほしい
 
 
サド、ナウン
・キャラとしてはとても好きだが国お抱えの密偵集団の優秀な人材がこれとは百済が心配になる。実力はともかく国への忠誠心が低すぎる。そもそも百済からピムンへの扱いが雑すぎるのでサドとナウンは悪くないです。ピムンなんだから捨て駒に使われるのは仕方ないが、元々サドもナウンもただ生きていくために仕方なくピムンになった可哀想な子ども。ソルランやトルデのように一発逆転を夢見たとか交換条件があってとかなら自業自得と言えるけど、好きでなったわけでもないのに雑に扱われたら忠誠心無くして当たり前。そこで一生かけてついていくと思わせる何かを与えないとこうなるのは当然のこと(教官は優しかったが国への忠誠心にはならないし)。そもそもそんな子どもを生み出さないように国を治めるのが王様の役目でしょう。
・サドの最期は哀れだが、そこまで惚れた相手と出会えたのはピムンとして何が楽しいのか分からない一生を過ごすよりよほど幸せだったんじゃなかろうか。とうの王女が狂ったあとナウンのことばっかり呼んでるのは可哀想、サドのことも思い出してあげて
・ナウンは裏切ってもゆすっても良いんだけどゆすり相手を破滅させるレベルの要求は良いことないからもうちょっとだけ謙虚になれば良かったね
 
 
 
 
 
 
東城王
・王位に値する器かといわれれば微妙でペクカに殺されたとこまでは自業自得かもしれない
・それはそうとして「命だけは助けてくれ」と懇願した息子に憎まれることになったのは可哀想、しかも東城王の息子は好色な遊び人という風評被害
・息子には憎まれるし実子じゃないチンム公に父上父上と慕われて泣かれる、あの世で絶対困惑してると思う

 
 
 
 
チンム公×ソルヒ
・序盤の利用してやろうから終盤のクソデカ感情激重プロポーズになるまで変化していくのがとても良い。女慣れしてるはずのチンム公からソルヒへの初めての贈り物が縁起の悪い靴なのも良かった
・恋愛感情ではないがチンム公はソルランに惹かれてたのは間違いない。でも最終的にチンム公はソルヒを選んだ決定打はソルランはチンム公を裏切り、ソルヒは愚直なまでに信じたからだろう。 (それにしたってソルヒには一生詫びて生きたいとまで言って、ソルランには「酷いことをした」で済ませちゃうのはちょっと笑ってしまう。謝れよ)
・一生償って生きたいと言いながら、ソルヒ相手には最後までチェファ殺しを肯定しなかったのは格好良いと思った。謝ってしまった方が気持ちは楽になるけどその分ソルヒが苦悩する。業は全て自分で背負った上で一生償っていくことを選んだと思ってる。
・どんな証拠を突きつけられても「一言で良いから違うと言ってくれ」っていうソルヒと「そちの言うことだけを信じる」っていう王様ほぼ同じこと言ってるのにソルヒには何も言えず王様には「私がやりましたが何か」と逆ギレなのは格差がありすぎて良かったですね。初期の頃「王様にバレたらどうしよう」とオロオロしてたのが嘘のようだ。
・あそこまで重たい愛を見せながら、主人公カップルと違って好きとか愛してるとか言ってないんですよね。そういう言葉を使わずにここまで深い愛を表現出来るって凄いなと思う
 
 
 
 
 
太子×ソルラン
・普通に見たら十分深い愛で美しい最終回なんだけど、裏話を知ってしまってるせいで太子→ソルランへの愛に描き方に物足りなさを感じてしまう。チンム公×ソルヒの壮絶に重い愛が描かれており、ソルラン→太子への愛もかなり伝わってきた分なおさら
・太子は十分命懸けでソルランを愛してたとは思うんだけど、結局ソルランは捨てられないがソルランのために国や民も捨てられない止まりで。だからこそ当初の予定だとどうしても百済を捨てられない太子が最後の最後でソルランを選ぶ究極の愛が輝いたはずというかなわない夢を見てしまう